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一般貨物自動車運送事業を始める際の要件詳細 場所(車庫等)編

突然ですが想像してみてください。

一般的な居住用の家を借りる場合にあなたならどうしますか?

インターネットで調べて物件探しをするのもいいでしょう。

あなたがせっかちだったら不動産屋へ駆け込むかもしれません。

 

では、あなたがトラックを何台も駐車するスペースを借りる場合はどうしますか?

ネットで調べるのにも居住用物件と違い、ほんの僅かな物件情報しかありません。

不動産屋へ行っても、そもそもそれだけ広大な敷地を扱っていないかもしれません。

あなたの使用する予定の車両に合わせた車庫探しは、かなり苦労する作業かと思います。

 

苦労の末にあなたがやっとの思いで探し当てた車庫は実は一般貨物自動車運送事業の許可のおりない土地だったなんてことになったらと思うとゾッとしますよね。

それでも、あなたがまだ探している段階であれば失敗も許されます。

あなたが運よく土地を保有しており、そこを車庫にしようと考えていたとします。

一般貨物自動車運送事業の許可申請をしたけど、許可がおりなかったなんてことになったらゾッとするのを通り越して目の前が真っ暗になるかもしれませんね。

 

車庫は運送業の商売道具とも言えるトラックを収容するスペースですから、営業所と同様に要件が詳細に定められています。

言うまでもないのですが、要件をクリアできなければ一般貨物自動車運送事業の許可はおりません。

 

ここでは一般貨物自動車運送事業の許可要件である車庫と休憩施設、業務内容によっては睡眠施設に関して、国土交通省・関東運輸局の公示を元に、専門用語を使用せず、できる限り分かりやすい言葉で説明していきます。

あなたが思い浮かべたその車庫が、一般貨物自動車運送事業の許可要件に適合しているかを確認する判断基準になることをお約束します。

 

それでは一つずつ確認していきましょう。

 

 

 

Contents

車 庫

(1) 原則、営業所に併設するものであること(例外有り)。

原則として営業所と車庫は併設されるものとなっております。

なかなかそこまで広大な敷地もゴロゴロあるわけではないかと思いますので、もちろん例外もあります。

営業所と車庫を地図上で結び、2点間の直線距離が原則として10km以内にあれば大丈夫です。

この距離に関してですが、地域によって20kmであったり5kmであったりしますので所轄の運輸局で確認しましょう。

 

 

(2) 車両と車庫の境界及び車両相互間の間隔が50センチメートル以上確保され、かつ、計画する事業用自動車のすべてを収容できるものであること。

「なんとかギリギリで全車両を停めることができた!」では一般貨物自動車運送事業の許可はおりません。

車両を駐車して隣に駐車する車と境界からそれぞれ50cm以上が確保されてないといけないわけです。

 

 

トラックのドアが開けられない程接近する配置は無論認められません。

当然、全車両を収容できる広さを有していなければならないのは言うまでもないでしょう。

ですが、どうしても1か所に全てのトラックを収容できない等の事情で車庫を分散させても構いません。

その場合、2か所の車庫とも営業所からの距離制限に適合させなければなりません。

 

(3) 他の用途に使用される部分と明確に区画されていること。

車庫はトラックの車庫として使用することを求められています。

何を当たり前のことをと思うかもしれませんが、ここでは車庫以外の用途で使用しないという意味です。

具体的には

  • 駐車スペースと通路がかぶったりしない。
  • トラック以外の物を置かない(トラックに必要な装備等)

といった具合です。

ドライバーが乗用車で通勤し、運行時にトラックと入れ替えて乗用車を駐車することは本来認められていませんが、実質は黙認状態となっています。

 

ここでトラックの大きさを表にまとめてみます。

車両 面積
7.5tを超えるもの 約38㎡
2tロング越~7.5tまで 約28㎡
2tロング 約20㎡
2tまで 約15㎡

 

ここであなたに注意して欲しいのは、何度も言いますがギリギリではダメだということです。

仮にあなたが10tトラックを5台必要だった場合で上記表にあてはめて計算すると、

38㎡×5台=190㎡

よっしゃ190㎡ピッタリだからオッケー!ではないんです。

車両間や境界との距離は50cm以上必要でしたよね?

また、通路と駐車スペースがかぶってもいけませんでしたよね?

つまり、あなたが選ぶ際は必要車両に見合った広さ+アルファの広さを考慮してほしいのです。

 

単純に2tトラックでも10尺や13尺で大きさは変わりますし、4tトラックにおいては発砲スチロールを専門で運ぶような超ロング(通称:オバケ)などもありますので一概には言えませんので上記の表はあくまで目安となります。

既に営業されている場合で車庫を増設しようかと悩んでいる状態でしたら、再度面積を計算されることをオススメします。

既存の車庫で実はもう1台分のスペースが確保できた!となれば余計な出費も抑えられて嬉しいですよね。

 

ここでの話はデリケートな部分になりますので、あなたがもし悩んでおられるなら専門家に相談しましょう。

 

近畿圏等の計算

トラックの大きさについて地域差があるのもおかしな話なのですが、

小型:10㎡

普通:25㎡

とザックリした計算をする地域もあります。

あなたを惑わしてしまったかもしれませんが、詳しいことは最寄の運輸支局や専門家に相談しましょう。

 

(4) 使用する権利を有していること。

あなたが車庫を使用する権利を有していることを証明する必要があります。

その際に”自己所有”と”賃貸”とで証明方法が変わってきます。

その証明をするのに何が必要になるかというと

  • 自己所有:土地登記簿謄本
  • 賃貸:契約期間が2年以上で且つ契約期間終了後に自動更新となる旨の記載がある賃貸借契約書

となります。

賃貸の場合は自動更新の記載があれば大丈夫ですが、万が一「事業用途不可」等と明記されていたら使用できません。

よく確認しておきましょう。

 

(5) 農地法 、都市計画法等関係法令に抵触しないものであること。

農地法で気をつけるべき点

あなたが「あそこの土地が余ってるから車庫にしようか。」と思っているなら登記簿を確認して頂きたいです。

地目が「」や「」ではないですか?

その場合は農地転用ををしないといけなくなってきます。

農地転用: 農地を農地以外のものにすることをいいます。
農地転用をする場合は基本的に都道府県知事、政令指定都市などでは市の農業委員会の許可が必要です。

 

しかし、農地転用をするには農業委員会と役場の厳しい審査があります。

なぜ厳しい審査があるかというと、農地を売っても二束三文の場合が多く、農地が簡単に宅地等にできてしまうと皆がこぞって売りやすい宅地に変更してしまいます。

そのように農地が減ると、それに伴って食料自給率が減る為、農地法で厳しい規制がかけられているという背景があるのです。

農地転用は1年以上かかるケースもありますので、どうしても農地転用が必要な場合、ここでは専門家の方に相談することをおすすめします。

 

都市計画法で気をつけるべき点

営業所の要件であった市街化調整区域であってもかまいません。

ですが、あなたが市街化調整区域内の車庫に営業所を併設することはできませんので注意が必要です。

 

その他の法令で気をつけるべき点

昔と違い屋根の有無は問われることがなくなりました。

青空駐車場でも構いませんし、屋根付きの倉庫などでもかまいません。

逆に屋根付きの車庫の場合は建築基準法や消防法をクリアする必要がでてきますので、運送業の車庫として使用ができるかの確認作業をしなければいけません。

 

(6) 車庫の出入り口の幅が適当であること。

あなたの使用する車両の幅が、「車庫の出入り口に面する道路(ここでは以後、前面道路と呼びます)」によって出入り口の大きさに関わってきます。

そして最終的に車両制限令に則して前面道路に適度な幅員があることを証明します。

車両制限令:車両の幅、重量、高さ、長さ及び最小回転半径の最高限度を定めらた政令。

 

先ず、車両制限令では

  • 市街地区域の道路(5条道路)
  • 市街地区域外の道路(6条道路)

と定めていますが、簡単に言うと建物密集地かそうでないかで前面道路に必要な幅員が変わります。

ここでは10tトラックの幅(2.5m)を基にした計算をしていきます。

市街地区域の道路

道路の種類 必要な幅員
一般市街地 通常 5.5m以上
極小指定・一方通行 3.0m以上
歩道の無い駅前・繁華街 通常 6.5m以上
極小指定・一方通行 3.5m以上

”極小指定”:交通量が極めて少ないと指定された道路

市街地区域外の道路

道路の種類 必要な幅員
通常 5.0m以上
一方通行又は300m毎に待避所のある道路 3.0m以上
極小指定 2.5m以上

4tトラックや2tトラックではモチロン車幅が変わってきますので、前面道路に必要な幅員も変わってきます。

 

 ここであなたは「よっしゃ!クリアしてるから契約してくる!」と思われるかもしれませんが、ちょっと待ってください。

上記条件をクリアして道路幅員証明書が取得できなければならないのです。

道路幅員証明書:前面道路の幅員に対して、収容する車両が車両制限令の規定に抵触していないことを証明するもの。

 

しかし、前面道路が公道の場合でも国道の場合は道路幅員証明書は不要となります。

そして、前面道路が私道の場合は通行承諾書も追加で必要となります。

一般貨物自動車運送事業の許可を取得する際に”道路幅員証明書””車両制限令に抵触していない旨の証明”また前面道路が私道の場合は”通行承諾書”が必要となってきます。

 

休憩施設・睡眠施設

(1) 乗務員が有効に利用することができる適切な施設であること。

あなたが営業所と車庫を独立して設置するとして、休憩施設を営業所に併設したと想像してみてください。

事務所の人間が全員退社して事務所を施錠してある状態だと、その後に車庫に戻ってきたドライバーが利用できないことになりますよね。

そういう事態が起こらないように工夫が必要です。

 

休憩施設に面積要件はありませんが、その名の通り休憩施設なのでドライバーが休憩できる設備(机・イス等)は設置しましょう。

 

(2) 睡眠を与える必要がある乗務員1人当たり2.5平方メートル以上の広さを有すること。

そもそも睡眠施設は必置要件ではないのですが、ドライバーの休息時間が8時間確保できないような運行をされる場合は必要となってきます。

2.5㎡の目安としてフトンを1組置けるスペースがあれば大丈夫かと思います。

 

休憩施設と睡眠施設は併設されても構いませんが、その際は間仕切り(パーティション)等で区別する必要があります。

 

(3)原則、営業所又は車庫に併設するものであること(例外有り)。

営業所・車庫・休憩施設は原則として1か所と定められています。

先述した通り、なかなかそれだけの広大地の確保が難しいと思いますので、それぞれ独立しても構わないということですね。

ただし、休憩施設は営業所、もしくは車庫と併設しなければなりません。

  • 営業所+休憩施設
  • 車庫+休憩施設

としなければなりません。

 

(4) 使用する権限を有していること。

営業所の要件と重複しますが、あなたが休憩施設として使用する権利を有していることを証明する必要があります。

その際にあなたの休憩施設が”自己所有”と”賃貸”とで証明方法が変わってきます。

その証明をするのに何が必要になるかというと

  • 自己所有:建物登記簿謄本や土地登記簿謄本
  • 賃貸:契約期間が2年以上で且つ契約期間終了後に自動更新となる旨の記載がある賃貸借契約書

となります。

2年未満の賃貸借契約をなかなか結ばないかとは思いますが、もしそのような短期契約を結んでいても自動更新の記載があれば大丈夫です。

 

(5) 農地法 、都市計画法等関係法令に抵触しないものであること。

営業所の要件と重複するので省略

 

 

まとめ

車庫に関して、あなたが思っていた以上の要件が求められていると感じたのではないでしょうか?

知らずに、あなたが知人から「知り合いの地主が安く貸してくれるし車庫にはもってこいの土地がある」なんて耳障りの良いことを言われたとしましょう。

それを鵜呑みにして賃貸契約を結んだら、実際には一般貨物自動車運送事業の許可がおりなかったなんてケースがあることもお分かりいただけたと思います。

 

あなたが運行管理という視点で考えた場合、はたまた営業所と車庫を別々で探す手間を考えると、1か所で営業開始されたいと思う気持ちも分かります。

しかし、そう都合良く広大な敷地を探し当てるのも相当の苦労が必要だということも分かります。

その為に営業所と車庫を別々に設置しても構わないと認められてはいるのです。

ですが、それぞれに事細かな要件が定められており、更にそれをクリアしていかなければ一般貨物自動車運送事業の許可は取得できません。

まずは慎重な確認作業から進めましょう。

 

最初にあなたが一般貨物自動車運送事業の許可を取得しようと思った場合、営業所や車庫探しから始めるかと思います。

あなたが営業開始するまでに時間があるなら、関係する役所へ1つずつ確認するのも良いでしょう。

逆に、営業開始までの時間を節約したい、又は面倒だと思うなら専門家に丸投げするのも良いでしょう。

どちらも正しいと思いますので、繰り返しますが慎重に探してみてください。

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