突然ですが、悲報です。
「な、なんやいきなり!?」とあなたは思ったかもしれません。
読んだ方全員にあてはまる内容でもないのですが、これから一般貨物自動車運送事業の許可を取得しようと思っている方への悲報と受け止めてください。
なんのことかサッパリかと思われますが、簡単に言うと申請の許可基準が厳格化と言っても過言ではない改正が行われたのです。
細かい部分も色々あるのですが、特筆すべきは資金計画、つまり必要なお金が単純に倍は必要となりました。
私も何度か許可取得のお手伝いをさせて頂いてきて、最小資金は500万円を切る申請もしたこともあるのですが、何をどうやっても今後の申請には1,000万円~必要となるでしょう。
令和元年10月1日と同年11月1日の2回に渡っての改正ですが、従前との変更点をここでは説明していきます。
一般貨物自動車運送事業の許可をこれから取得されようとしているあなたは必ず読んでください。
そうでない方もできれば知識の補完と捉えて読んでやってください。
それでは説明していきます。
Contents
資金計画
既にご存じのあなたも、知識のおさらいとして説明させて頂きます。
運送事業を開始するのに必要な資金見積もりを作成し、総金額を上回る金額の残高を証明する必要があるのですね。
どのようなものに、どれだけ必要なのかを表にしますと、今までは
費 目 | 内容 |
人件費 | 役員報酬を含む2ヶ月分 |
燃料油脂費及び修繕費 | 燃料油脂費及び修繕費のそれぞれ2ヶ月分 |
車両費 | 取得価格(分割の場合は頭金及び6ヶ月分の割賦金)又は6ヶ月分の借料 |
建物費 | 取得価格(分割の場合は頭金及び6ヶ月分の割賦金) 又は6ヶ月分の借料及び敷金等 |
土地費 | 取得価格(分割の場合は頭金及び6ヶ月分の割賦金) 又は6ヶ月分の借料 |
器具、工具、什器、備品等 | 取得価格(割賦未払金を含む。) |
保険料 | 自賠責保険料、任意保険料及び危険物を取扱う運送の場合は、当該危険物に対応する賠償責任保険料のそれぞれ1ヶ年分 |
各種税 | 自動車税及び自動車重量税のそれぞれ1ヶ年分、自動車取得税及び登録免許税等 |
その他 | 道路使用料、光熱水料、通信費、広告宣伝費等の2ヶ月分 |
といった内容でした。
それがどう変わるかというと。
費 目 | 内容 |
人件費 | 役員報酬を含む6ヶ月分 |
燃料油脂費及び修繕費 | 燃料油脂費及び修繕費のそれぞれ6ヶ月分 |
車両費 | 取得価格(分割の場合は頭金及び12ヶ月分の割賦金)又は12ヶ月分の借料 |
建物費 | 取得価格(分割の場合は頭金及び12ヶ月分の割賦金) 又は12ヶ月分の借料及び敷金等 |
土地費 | 取得価格(分割の場合は頭金及び12ヶ月分の割賦金) 又は12ヶ月分の借料 |
器具、工具、什器、備品等 | 取得価格(割賦未払金を含む。) |
保険料 | 自賠責保険料、任意保険料及び危険物を取扱う運送の場合は、当該危険物に対応する賠償責任保険料のそれぞれ1ヶ年分 |
各種税 | 自動車税及び自動車重量税のそれぞれ1ヶ年分、自動車取得税及び登録免許税等 |
その他 | 道路使用料、光熱水料、通信費、広告宣伝費等の2ヶ月分 |
変更部分を分かりやすく赤字で示しましたが、
人件費・燃料油脂費及び修繕費で3倍に、車両費・建物費・土地費で2倍必要となったのです。
私自身がちょっとピンとこない数字でしたので、過去の申請に用いた資金計画をこれにあてはめて再計算してみたところ、必要資金が倍以上となっていました。
仮に役員1名の法人において、役員兼運行管理者+運転手5人を最低賃金で計算すると250万円前後の人件費で収まっていたのが、その3倍は必要となるので人件費だけで750万円前後の資金が必要となるのですね。
更に営業所となる建物や車庫となる土地の賃借料を1年分計上する場合は途方もない金額を用意する必要が出てきます。
車両においても割賦月額の12か月分を最低でも5台計上するという場合は大幅な資金繰りの見直しが必須作業となるでしょう。
標準処理期間
行政手続法という法律に定められているのですが
(標準処理期間)
第六条 行政庁は、申請がその事務所に到達してから当該申請に対する処分をするまでに通常要すべき標準的な期間(以下略)
つまり、申請書を提出してから許可を出すまでに要する期間を大枠で定めているのです。
今までは3~4か月とされていたのが少しだけ延長されて3~5か月となりました。
個人的な意見としては、営業所や車庫を借りて申請する方に不利な内容になったなぁと思っています。
というのも申請時には使用権原を証明する為に賃貸借契約書を提出する必要があるじゃないですか?
申請前から許可後の運輸開始までの期間って、この賃借料が言い方悪いですけど死に金となるんですよね。
まして数百坪の車庫を借りようとしている場合、賃料月額も結構な金額になるかと思うんですよ。
地味にキツイ変更点かと思いますよね。
備品の備え付け(写真の提出)
これは地域差がある内容なんですが、営業所・休憩室・仮眠室(車庫)の写真を提出する必要が出てきました。
中部・近畿運輸局管内の人は「あたりまえやん?」とお思いかもしれませんが、関東運輸局管内では提出する必要がなかったんですよね。
それが今後は必要になると共に、細かい指示まで出ています。
営業所に必要な備品等が備えられていることが確認できる写真の提出があること。
という内容です。
それまでは営業所の写真提出時、賃借直後の画像、つまり空ッポの状態の画像提出でも不問でしたが、机やイスなどを備えた写真を提出する必要が出てきたのですね。
そこであなたは「殺生な…。」とおっしゃるかもしれませんが、以下のようにも補足してくれています。
なお、申請時において当該備品等が用意できない等特段の事情がある場合は、事後に、必要な備品等が備えられていることが確認できる写真の提出があること。
これは運輸開始前報告時までに用意できれば良いので少しだけ安心しましたね。
契約期間の延長
重複しますが、営業所や車庫を借りた場合に賃貸借契約書を以って使用権原を証明するのでしたよね。
その賃貸借契約書の中身もいくつかの注意点があるのですが、これまでは契約期間は1年以上あれば良いとされていたのが、今後は2年以上の契約期間が必要となりました。
しかし、自動更新の旨が記載されていればフォローできる点に変更はないので、あまり気にしなくてもいいのかもしれません。
損害賠償能力
以前は車両が加入する保険について「対人無制限」だけクリアしていればよかったのですよね。
今後はそれにプラスして「対物200万以上」も求められるという小変更がなされています。
その他
見出しにするほどでもない、その他の変更点として
・運行管理者のグループ企業の委託の禁止
・欠格事由の厳格化
などが挙げられます。
まとめ
ここまで読んで、あなたは正直どう思いました?
私は「金無いヤツは無理して取らなくていいんやで?」って言ってるように感じたんですけど…。
関係各所と色々お話をさせてもらうと、実質5台を下回っての営業活動をされている方が多いのは否めない現実で、今までがユルかったんだという意見も耳にしました。
今回の変更によって、一般貨物自動車運送事業の許可を取得するというハードルは確実に上がりました。
許可を取得しようと検討されていたけど、内容を知ってあなたはためらったかもしれません。
すると新規許可取得者が減少する傾向になるかと思うのです。
あなたは「誰トクの話よ?」って思ったことでしょう。
それは既に許可を取得している方ではないでしょうか?