あなたが日々の業務を粛々とこなしていく中で「今日は忙しかったなぁ」と思う日があるかと思います。
それとは全く逆で「最近ヒマだけど大丈夫かなぁ?」と思う日もあるでしょう。
それは本当に世間が忙しかったり、ヒマだったのでしょうか?
世間がヒマな状況でも配車担当次第でドライバーは忙しくなり、世間が忙しくても配車担当次第ではドライバーがヒマにもなるでしょう。
ドライバーの視点と配車の視点、はたまた経営者の視点でそれぞれ違った感覚を受けるはずです。
更に広い視点でみると、業種や地域、はたまた経済状況によってもそれは変わってきます。
あなたは木を見て森を見ずとなってはいませんか?
そうは言っても感覚というものは自分が基準であるのも事実です。
しかし、自分の感覚だけを頼りに運送業を経営していくには、リスクを伴うでしょう。
ここでは運送業にまつわる様々なデータをグラフでなるべく分かりやすく提示していきます。
あなたに”気付き”を与えてくれるデータが、今後の経営戦略に役立つことをお約束します。
戦略があって戦術が成り立ちます。
戦略がなく経営を続けても将来的にそれは淘汰されていくでしょう。
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それでは一つずつ確認していきましょう。
Contents
一般貨物自動車運送事業者数の推移
あなたは「運送業者って増えてるの?減ってるの?」と疑問を持っているかもしれません。
それはあなたの地域における事業者数の推移で増えてると感じたり、減っていると感じるのではないでしょうか。
ここでは平成元年以降の事業者数の推移を確認します。
平成元年には35,000社程であった事業者数は、平成2年の物流二法による規制緩和で大幅に増えていきました。
1990年 12月1日に貨物輸送の規制緩和の一環として制定された。
貨物自動車運送事業法は,トラック事業規制を道路運送法から独立させ,従来の免許制を許可制に切換えた。
それに伴い、既存の営業区域が拡大され、最低車両台数が減り、運賃を自由に決められるようになってからは右肩上がりに事業者数は増えていきます。
しかし、平成19年に57,672社をピークとし、緩やかに減少していきます。
平成27年は56,722社となりますが、前年比495社減っているのです。
- 許可を取得しての増 =1,017社
- 廃止・吸収合併に伴う減=1,512社
という内訳で、それでも年間1,000社以上は一般貨物自動車運送事業の許可を取得されているのが興味深いです。
業種別営業収入の比較
物流業界全体における営業収入の比率はどうなっているのでしょう?
圧倒的にトラック運送事業が占めており、全体の過半数となっております。
次いで外航海運業・倉庫業・港湾運送業と続きますが、これらは大きなヒントになりえないでしょうか?
国が推進するモーダルシフトも数年前から騒がれていますが、全体比率では極僅かな数値となっております。
CO2の排出削減、大量輸送による輸送効率の向上等が見込める。
一番大きな理由としては”運んでほしい荷物がない”と荷主が感じているからです。
国が荷主を対象として行ったアンケートで
- 小ロの輸送に適していない
- 急な出荷量の増減に対応できない
- トラックに比べて輸送コストが高い
との回答が多かったのです。
これに個人的な意見を申し上げますと、
- 積み替え回数が多いことによる商品事故の懸念
- 精密機械をはじめとした工業製品の輸送に向かない
などが考えられるでしょう。
そして見落としてはいけないのが、トラック運送事業における中小企業率が99.9%を占めている点です。
日本の物流を支えているのは中小企業の運送会社であると私は誇りを持ってほしいです。
貨物輸送量の推移
あなたは「昔と比べて荷物が減ったよなぁ」などと嘆いてはいませんか?
少し古いデータとなりますが、全体ではそんなに減っておらず、おおむね横ばいといった数値でしょうか?
あなたが感覚的に荷物が減った・ヒマになったと感じるのは、実は全体の物量が減ったのではなく、増大した事業者とパイを食い合う格好となった為なのです。
ここで勘の良いあなたは最初のグラフを思い出したのではないでしょうか?
事業者数は緩やかに減ってきていることに。
貨物のロット推移
あなたがトラックドライバーの経験者なら「これだけしか積んでないのにチャーターでいいの?」と一度は感じたことがありませんか?
実際にロットあたりの重量は減っています。
たしかに宅配便サービスの利用者が増大し、それに反比例するかっこうで大口荷物が若干ではありますが減ってるのも事実です。
ですが、積み合せ便・混載便に追い風が吹いていると考えることはできないでしょうか?
トラック運送業界の人手不足感
中型免許制度が施行されて10年が経過しましたが、これは人手不足に拍車をかける一番の要因だと誰もが思っていることでしょう。
事業者の半数以上が”不足”もしくは”やや不足”と感じるのにも無理はないかもしれません。
それに対し、国土交通省はフルトレーラーの全長を21mから25mに緩和することによって人材不足を補おうとしています。
そこではないような気もするんですが…。
しかし、あなたが「逆に人材がいれば安泰でしょ?」という発想を持っているならば、即新規参入しましょう。
運送委託先の選定
グッと身近な問題となりますが、荷主はどういった基準で運送会社を選んでいるのでしょう?
近年では地元の業者だからという単純な理由で選ぶ荷主が1番多く、次いでサービスに関する条件で選ばれるのが多い模様です。
ですが、これはサービスを向上させれば簡単に引っくり返すとこはできる内容でもあります。
そして、荷主が運送会社を変更するのにも理由があって
1番多い理由が運賃の折り合いというのも、コスト削減が波及する昨今の事情からは仕方がないかもしれません。
サービスの質と運賃の重点をどちらに置くかは荷主次第な場合が多いかと思います。
荷主を獲得する際にはそういった部分も荷主の担当者と話し合っていくなかで見極めが必要でしょう。
荷主の要望と運輸業の対応
荷主の要望に対して運送会社の対応はどの程度できているのでしょう?
運賃を値下げして欲しい荷主に対し、殆ど対応しきれていない運送業者が多いのは仕方がないとも言えるかもしれません。
しかしコンプライアンスが叫ばれる昨今、荷主の要望以上のサービスに徹底している運送会社が増えてきているのが伺えます。
若干ではありますが、”輸送のスピードアップ””定時納入率”を配慮することで勝算が見いだせないでしょうか?
とは言え、「4tトラックだから4t積めるでしょ?」等を口走る荷主が未だにいるのも事実です。
当然、荷主は運送会社の労基など考えていないことが殆どなので、十分注意が必要です。
荷扱量・運送料金水準
実際に運輸業界では荷扱量についてどのように感じているのでしょう?
2年前を100とした場合の荷扱料を現在と比較したデータとなります。
流石に08年のリーマンショック直後は業界の半数以上が100を割り込んでいます。
ですが、年々荷扱い量が増えているのが現実です。
一番新しいデータでは100%以上の会社が3割を占めるのにも注目すべきではないでしょうか?
そして運送料金水準はどのように推移してるのでしょう?
こちらも2年前を100とした場合の運送料金を現在と比較したデータとなりますが、
直近では過半数が2年前と変わらないという数値です。
しかし、運賃の値下げをする荷主は少なく、逆に運賃が上がり続けているのが現実です。
まとめ
あなたが思っていた内容と概ね一致していたでしょうか?
はたまた、あなたが思っていたよりも厳しいなと感じたでしょうか?
あなたの背中を無理に押すような材料ばかりを揃えたつもりもなく、あくまで運送業界の現実を知って欲しいと思い、集めた資料ばかりです。
ただ、知っているのと知らないのとでは今後の経営戦略も大きく変わってくるかと思います。
戦略という大局を把握し組立て、それを受けてどのように動いたらいいのかを戦術で実践し、局所的に戦法があります。
小手先の戦術や戦法がうまくいっても、全体的な戦略がシッカリしていなければ、それは全体的にうまくいかないこともあります。
あなたは今はボンヤリとしか戦略を思い描けていなくても構いません。
競合他社や荷主、または地場産業等のあなたの周りを取り巻く環境を先ずは思い出してみてください。
突然、フッと全ての戦略が組み立てられる日がくるかもしれません。
その為にも常に考えながら行動する必要があるでしょう。