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一般貨物自動車運送事業(営業ナンバー)の許可は不要?

 

突然ですがあなたは今、「一般貨物自動車運送事業の許可を取得したい!」と思っていませんか?

あるいはその一歩手前の、いつかは独立して運送業を開業したいなぁとボンヤリ意識し始めている段階かもしれません。

そういった意識が芽生えると同時に「許可を取得したいけど、手間もお金もかかりそうだし、もっと簡単に営業ってできないものかなぁ?」と考えることは自然な流れです。

あなたの思いは全くその通りで、実際に一般貨物自動車運送事業の許可を取得するとなると厳しい要件を満たしたうえで、膨大な量の申請書を用意しなくてはなりません。

行政手続きの専門家である行政書士に依頼したとしても、およそ50万円からと決して安くない費用が掛かります。

これでは躊躇する気持ちが芽生えるのは仕方がないと言えるかもしれません。

しかし、教科書通りのことを言うようで心苦しいのですが、事業として運送業を営む場合はやはり許可は必要です。

そして、どんな事業にも言えることですが無許可営業をすれば当然法律違反となってしまいます。

許可が必要なのは分かってるけど、だからといって許可を取るのは面倒だ。それなら他人の許可名義を利用して営業したくもなるかもしれません。

すると”名義貸し”という行為に走りがちですが、名義は貸した方も借りた方もやはり罰せられてしまいます。

一般貨物自動車運送事業の許可は、営業ナンバーや地域によって緑ナンバーや青ナンバーと呼ぶこともありますが、ここでは統一して一般貨物自動車運送事業の許可と呼ぶようにします。

 

私は静岡県三島市で現在は行政書士事務所を運営しておりますが、それ以前は自分自身も運送業に25年間勤務と実に四半世紀もの間携わってきた経験があります。

その経験と知識をもとに、一般貨物自動車運送事業の許可基準を他業種と比較するなどして出来る限り分かりやすく詳しくここで説明していきます。

これを読むことで一般貨物自動車運送事業の許可を取得するかしないかの判断基準になるかとお約束します。

是非、一読してください。

 

こちらも合わせて読むことをオススメします。

運送業の償却ドライバー(償却制度)は本当に賢い選択肢?

 

まず最初に、そもそもの一般貨物自動車運送時業の定義を確認してみましょう。

Contents

一般貨物自動車運送事業とは

一般貨物自動車運送事業とは「普通トラックを使用して、荷主の荷物を運送する事業」です。

一般的に言う”運送業”はこれにあたるもので、荷主の方から運送依頼を受け、運賃を受け取る場合、全てこの事業にあたります。
運送に使用する普通トラックとは

運送に使用する普通トラックとは
・小型貨物車(4ナンバーのトラック)
・普通貨物車(1ナンバーのトラック)
・冷凍食品、石油類などの運送に使用する特種車(8ナンバーのトラック)などをいいます。

 

要約すると、

荷主の依頼を受けて荷物を運び

運賃を受け取る

となりますので、一般的にトラック等で運送することを仕事として運送費収入を得る為には許可は必須要件となってくるわけです。

 

こう説明すると「じゃあベッピンさん(白ナンバー)で荷物運んでる車はどう説明するの?」と思われるのが人間の心理かと思いますので、一つずつ確認していきましょう。

トラックの場合

トラックの場合、自家輸送であれば営業ナンバーは不要です。

自家輸送とは自社製品等を運ぶことのみを目的に輸送することです。

その場合は荷主の依頼とならない為、荷物を輸送しているけれども営業ナンバーは不要となります。

しかし、自社製品を運ぶ場合でもグループ会社のように別会社であり、運賃が発生する場合は必要となります。

大手飲料メーカー等に見られる「○○ロジスティクス」のような物流子会社等はこれにあたるわけですね。

とは言え、自社製品だけで成り立つのは稀で物流子会社も営業ナンバーは殆ど取得されているのが現実です。

 

トラックで一般貨物自動車運送事業の許可を取得する場合にも様々な注意点が必要となります。

それらの詳細な説明をしたページも用意しております。

一般貨物自動車運送事業を始める際の要件詳細 車両編

 

産廃業の場合

産廃業の場合、産業廃棄物の収集・運搬をセットとすることによって有償にて運ぶことが認められています。

これが収集を伴わない運搬だけだったり、廃棄物ではなく有価物を運搬するとなると許可が必要となります。

産廃業では過去にこの青ナンバー問題が何件も勃発しており、廃棄物の収集運搬を白ナンバーで営業していることに対し、貨物自動車運送業法違反として告発までされたケースもあります(結果、不起訴)。

 

建設業(主にダンプ)の場合

建設業の場合、大型ダンプの使用に関しては「許可」ではなく「届出」となっておりまして、経営する事業の種類によって細分化されています。

経営する事業の種類 表記
運送事業
砂利販売業
砂利採取業
建設業
砕石業
採石業
その他(廃棄物処理・生コンクリート製造業)

※上記の事業を経営している場合であっても、運送事業の許可無しに有償で他人の貨物を運送すれば運送事業法違反になります。

けれども「あれ?工事現場とかにいるダンプって有償で土砂を運搬してるよね?」といった疑問が湧くのは当然のことでしょう。

仕事の受注は○○の現場から△△まで1㎥辺りいくらで運ぶであったり、1日貸切でいくらであったりと明らかに有償で輸送してるのが現実です。

ところが民法では”請負”というスタイルが認められており、一度自分の所有物にすることによって自社製品とみなして輸送するという超がつくほど拡大解釈して無茶苦茶グレーゾーンで営業している実態もあるのです。

 

民法では「第632条 請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。」としています。
ポイントとしては「仕事の完成が目的」になっている点でしょう。

 

トラック運送でも請負っていけるんじゃないの?

建設業(ダンプ)の場合、昔から慣例的にこのようなスタイルで営業されており、行政側としても昔からそれでやってきてるからと目をつむっているのかは分かりません。

まして東京オリンピック開催に向けインフラ整備や建設ラッシュがあるので、いちいち取り締まっていたら建設物が完成するまでに支障をきたすでしょう。

※東京オリンピック開催前に作成された記事です。

そのような背景から、少なくとも当分の間は大きな問題にはならないかと思います。

 

しかし、昨今のコンプライアンスの気風が高いご時世と相まって、ダンプで営業ナンバー取得者が増えているのも事実です。

一般貨物自動車運送事業を始める際の要件詳細 場所(営業所)編

一般貨物自動車運送事業を始める際の要件詳細 場所(車庫等)編

一般貨物自動車運送事業を始める際の要件詳細 資金編

上記のような、新規で用意するのは難易度が高い要件も、既に建設業で営業なさっていれば、比較的容易なのかもしれません。

一番多い理由としては、公共工事等に入札される際の要件として、営業ナンバーが必須となってきているからでしょう。

 

「じゃあ白ナンバーのままでいいじゃないか」となりがちですが、運送業の場合ですと、そもそも白ナンバーで仕事をまともにもらっている会社を見た記憶がありません。

荷主サイドとしても白ナンバーのままでは相手にしてくれないでしょう。

コンプライアンスが叫ばれる昨今「ウチは請負で運ばせてもらう」などと言っても誰も相手にしてくれないのは容易に想像できるかと思います。

 

名義を借りて営業ナンバーを付けるのは?

昔よく聞いた話ですが、個人でトラックを購入して名義を運送会社にし看板料として毎月一定額を支払ってるなんて言ってた人がいましたが、あの人達は今でも元気に走っているのでしょうか?

本来は名義貸し・名義借りと判断されて違法となるのでしょうが、償却ドライバーという営業形態も実存しますので判断が難しいところですね。

”償却ドライバー制度” 本来は運送会社が負担すべき燃料代・高速代・車両代・保険料等の全ての経費と、いわゆる「看板料」(一般では総売上の数%)を支払った残りの売り上げを全てドライバーの給料とする制度(会社単位で経費部分に差がある)。
個人で車両を所有するドライバーの殆どがこの制度の下で仕事をしているのが現状。

 

一般的な考えとして

一般貨物自動車運送事業を始める際の許可要件(総論)

上記リンク先ほどの要件があるのに、全てスッ飛ばして、簡単に営業を開始できていいものでしょうか?

持込償却ドライバーは名義貸しだけど、社員償却ドライバーは名義貸しにならないか?なんて考えると、グレーゾーン経営ですよね。

私個人の良い悪いの判断はともかく、監査などでどう判断されるかという基準で考えた方が賢明かと思われます。

明らかに不要なケース

・軽自動車

・バイク

上記の2つは一般貨物自動車運送事業には当たらないので許可は不要です。

その代わりに貨物軽自動車運送登録という別の手続きが必要になります。

・運賃をもらわない場合

現実には運賃収入がなければ運送業として運営ができないので考えにくいケースですが、上記のダンプ等の場合は請求書に”運賃”ではなく”人工代”としてあくまで人件費として請求するケースもあります。

同様に運送業で”運賃”ではなく”人工代”と請求しても監査が入った場合に当然運賃とみなされるので、請求書の名目を変えるのも現実的ではありません。

 

まとめ

運送業をまともに運営していく場合、残念ながら一般貨物自動車運送事業の許可を素直に取得するのが一番の近道だということに異論はないでしょう。

ですが、許可取得の重要性を認識してはいるものの、人は弱い生き物なので、逃げ道があると簡単にソッチへ行ってしまいがちです。

  • もし会社が潰れたら(辞めたら)俺のトラックはどうなるのかなぁ?
  • 会社に監査が入ったら償却制度は続けられなくなるのかなぁ?
  • そもそも償却制度って単に名前を変えた名義貸しってことだよね?
  • 今日は荷物を積んでないけど仕事を干されてるのかなぁ?
  • 自分だけ面倒な仕事ばかりさせられるけど差別されてるのかなぁ?
  • 今は良いけど、この仕事はいつまで続けられるのかなぁ?

パッと思いついただけで、まだまだ羅列できる内容はありますが、今あなたは上記のような悩みを抱えていませんか?

1つ2つ思い当たるという方が多いと思いますが、その方々は予備軍です。

そして、ほぼ全て当てはまるようでしたら、あなたは直ぐにでも一般貨物自動車運送事業の許可を取得した方が良いでしょう。

 

色々な思いを胸にハンドルを握っている方もいらっしゃるかと思います。

様々な事情が個々にあるのも重々承知しております。

ただし、許可が必要なのであれば、やはり取得するべきだというのがこのサイトのスタンスです。

後ろめたい気持ちを持っていたり、人には大きな声で言えない事情を抱えているのであれば、一人で悩まず専門家の方に相談してみるのも一つの手かと思います。

あなたの気持ちに寄り添った的確なアドバイスを与え、不安や悩みを解消してくれる人は必ずいます。

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